時報ラジオ
『たった40分で誰でも必ず小説が書ける 超ショートショート講座』を読んで書いたもの。
物書きの練習でたまに書いてます。せっかく書いたので、ここに上げておきます。その3。
世界から時計が消えて半世紀。
時計の代わりとして普及しているのがラジオだ。
昔あったラジオとは違っていて、ひたすら時報が流れているので、『時報ラジオ』と呼ばれている。
開発された当時は普通のカセットラジオくらいの大きさだったけれど、今では腕時計型が主流で、生まれた時から装着が義務付けられるようになって久しい。見た目は『スマートウォッチ』と呼ばれていたものに似ている。
時間の概念が消えたわけではない。人々は時報ラジオから聞こえてくる時間を元に生活している。
私のラジオはちょっとポンコツで、色んな国の時間が混ざって聞こえてくる代物だった。多国語で他の場所の時間が流れてきても、わからないから時間を間違えることはないけれど、正直うんざりしている。技師に見てもらっても異常はないと言われてしまうのでそのままだ。
この時報ラジオには逸話があって、ごく稀に時報以外のことが聞こえてくることがあるらしい。それがどんな内容なのか、私は知らない。けれど、臨終を知らせる時報が聞こえてくると聞いたことがある。
なんでも、その音が聞こえると持ち主はすぐ死んでしまうらしい。文字通り死を告げる音だ。怖いとは思うが納得できる。時報ラジオは使用者の生命力で動いてるから。仕組みはわからないけれど、そういうものだと思っている。その証拠に体調が悪い日はラジオの調子も悪くなる。ノイズがひどかったり、それこそどこの場所の時間がわからない時を刻み始めたり。私は特に不具合が多くて、時報ラジオに振り回された人生だった。
時報ラジオにはいいところもあって、このラジオの装着が義務付けられるようになってから、遅刻する人がほとんどいなくなった。なにせ自分にしか聞こえない声で五分ごとに時間を教えてくれるのだから、遅刻のしようがないのである。始めは煩く感じたそれも今では当たり前になってしまっていた。
難点を挙げるとしたら、取り外しができないことと、生真面目な人ほど時間に追われるようになることだろうか。そういう人たちの手首には、決まって引っかき傷のような赤い筋がある。どうにかしてラジオを外そうと試みた証だ。ラジオを意図的に壊そうとすると警報が飛んでしまうので、ベルトを外すしかない。
言い忘れていたけれど、このラジオは死んだら使えない。理由は先に述べた通り。
そう。頭の中で刻まれ続ける秒針から解放されるには、死ぬしかない。
「午前5時零分をお知らせします。お別れです」
これだ。私はずっとこの時を待っていた。
やっと終わる。
はやる気持ちを抑えて、私は新しい明日へ一歩踏み出した。
落ちていく感覚の中で、秒針が遠くなっていく。
――ざざ、ざざざ……さようなら。
それは、どんなモノですか? 説明して下さい。
・ひたすら時報を流す
・だけどいろんな国の時間が混ざるからよくわからない
・時計が消えた世界で唯一時間がわかるもの
・腕時計代わりに腕につけるラジオ
・時々時報以外のことが聞こえる
・「終わりを告げる音」持ち主の人生の終わりを教えてくれる
・アラームはかけられない
・時計にならない時計
・生命力で動いてる
それは、どこで、どんなときに、どんな良いことがありますか?
・自分が死ぬ時間がわかる(死に際だけど)
・軽いしコンパクト
・自分にしか聞こえない
・時計にならないと評判だけど、そのせいか遅刻する人が減った
・電池替えが不要
・好きな声に変えられる
・規則正しい生活が無意識で送れる
・時計が読めなくてもOK
それは、どこで、どんなときに、どんな悪いことがありますか? または意外な特徴や使い方はありますか?
・5分ごとに時報が流れて煩い(それ以外は秒針の音)
・時間に追われるようになる
・死んだら使えない
・取り外せない
・体調が悪い時に体力を吸い取られるとつらい
・時々めちゃくちゃ電波が悪くなる
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