give you my word

ミリーナ(ゲフィオン)とカーリャ(ネヴァン)の過去捏造です。捏造大丈夫な方向け。暗い。前に似たようなこと書いたような気がする。互いに少し病んでる。


 雨続きの日が終わり、久しぶりに晴れた休日。ミリーナはカーリャをピクニックに誘った。目を見開いた彼女の姿に、そういえばこんなことをするのは数年ぶりだなと思った。最近は研究が忙しく、ろくに自室にも帰っていなかったし、カーリャともまともに口を利いていなかった。

 部屋の奥に仕舞い込んでいたバスケットにサンドイッチや果物を詰め込んで、昔よく二人で出かけた場所に行った。随分寂れていたけれど、大きな木は健在で、その下で昼食を済ませた。少し作りすぎたサンドイッチも綺麗になくなった。カーリャが楽しそうなことが何よりも幸福で、心を軽くしてくれた。

 それから敷物の上に寝転んで、流れていく雲を眺めながら、ぽつりぽつりと会話をした。魔鏡科学以外のことを話すのは久しぶりだったせいか、あまり話題が浮かばない。カーリャの話が聞きたいと話題を振って、ミリーナは静かに耳を傾けていた。

「今度はミリーナ様の話が聞きたいです」

 そう言われて、ミリーナは口籠る。一緒にいる時間は前より減ったので、カーリャに話していないことはたくさんある。でもきっと彼女が聞きたいような話ではないだろう。困った末に、ミリーナは最近よく考えていたことを口にした。

「もし、私がカーリャの鏡士じゃなくなったとして、」

「そんなことあり得ません!」

カーリャの大きな声に思わずぴくりと肩が跳ねた。彼女の琴線に触れてしまったことに気づいたが、時既に遅し。ここで話の路線を変えるのも不自然すぎる。和やかだった空気が張り詰めている。

「落ち着いて。もしもの話よ。たくさんの可能性を考えておくことは、研究者の癖のようなものだから。そのつもりで聞いてほしいの」

「わ、わかりました」

 すみません、と謝る彼女が一息つくのを見届けて、ミリーナは話を続けた。今度は慎重に言葉を選ぶ。

「――カーリャが私から独立して、鏡精ではなく人間に近い存在になったとして。世界と私、どちらかを選ばなきゃいけなくなったら。カーリャはどっちを選ぶ?」

「ミリーナ様です」

「それはあなたが私の鏡精だから? 無意識に、刷り込みに似た何かから生まれる感情のせいで、そう思っているのかもしれない。もっとよく考えてみて。あなたの、カーリャとしての気持ちを聞かせてほしいの」

 カーリャがミリーナに向けている感情は、鏡精由来の忠誠心からきているとは思っていない。けれど、そういった面がないとも言い切れない。

 鏡精だからではなく、カーリャだから。親友だから大切だとそう言い聞かせてきた。カーリャもそうだと、ミリーナを真っ直ぐ見つめて、目に涙を浮かべて言ってくれた。

 長く一緒にいるからこそ、独立した一人の存在として意識した方がいいのではないか。ミリーナの心から具現化された鏡精だけれど、生きてきた二十数年は彼女自身のものだから、もっと自分のために生きて欲しい。

 それを伝えたかったといえば、あとづけになってしまうが。

 カーリャは困惑を浮かべつつも、目だけは逸らさなかった。

「私には、ミリーナ様が、何を言っているのかわかりません。ミリーナ様は大切な人です。マスターだからではなく、ミリーナ様だからです。世界なんて関係ありません。ミリーナ様がいてくれれば、私はそれだけでいいんです。この答えでは不十分ですか。どう答えたら、納得してくれますか。教えてください」

 悲痛を訴える瞳が揺れている。その姿が、ミリーナにはあの時の自分と重なって見えた。イクスを失って復讐を誓った自分に。

 もし本当に世界とミリーナを天秤にかける日がきたとしたら、カーリャは間違いなくミリーナを選ぶだろう。

ーーああ、やっぱりカーリャは私の鏡精だ。

「困らせてごめんなさい。軽々しく話題にするようなことではなかったわね。カーリャは私のことを、本当に大切に思ってくれているのね」

「当たり前です。私にはミリーナ様しかいないのですから」

 向けられた背中に言葉をかけるも、カーリャからの返事はなかった。そのまま暫くカーリャが落ち着くのを待って後片づけをした。彼女の目が赤いことには気づかないふりをして、努めていつも通りに振る舞った。カーリャは成体になってから、わかりやすい感情表現をしなくなった。だからきっとこれでいいのだと思う。

 研究所への帰り道、珍しくカーリャが腕に抱きついてきた。思わず立ち止まる。ふわりと控えめな甘い香りがする。

「どうしたの?」

「……ミリーナ様は、私のことを切り離したりしないですよね?」

「もちろんよ。あの日、約束したわ」

「覚えています。じゃあ、今日も約束してください」

 そう言うカーリャの小指に自分の小指を絡ませてーー少し迷ったけれど、ミリーナはそっと額を合わせた。目の前でぎゅっとエメラルドの瞳が閉じられる。確かに少し恥ずかしいかもしれない。

 でもこれでカーリャが安心してくれるならと、ミリーナも目を閉じる。マスターと鏡精の間で思考は伝わらなくても、感情や気持ちは何となく伝わる。気持ちをのせて言葉を紡いだ。

「約束するわ。絶対に切り離したりしない」


この二人で過去捏造すると、どちらかが病んでる気がします……そういうイメージが強いんだと思います。ミリーナは大切な人(イクス)を失ってるわけだし。カーリャは完全に私の好みですね(ネヴァンとしての彼女を見てると、病みそうにない)

よく考えたら、私が知ってるのは二人目のミリーナとネヴァンとしてのカーリャなので、より正確に言えば、彼女たちのことは何にもわからない。性格が同じだとは思えないし、経験によって思考も変わると思います。実際、今のミリーナも、自分が同じ立場だったらゲフィオンと同じ選択をしていると言ってますしね。

何が言いたいかというと、公式で彼女たちの過去が明かされないかぎり、好きなように書ける(と思っている)公式ありきの二次なので、公式設定は大事にしたい。

お願いですから、過去編やってください〜〜〜!

割と短時間でサクッと書いたものだったので、ちょっとまどろっこしい内容になってしまったと思います。プライベッターからちょっと直しました。文章書くのも作るのも難しいです。感情がそのまま文字になればいいのにと思います。

(プライベッターから少し改編、あとがきのみ追記)

Jewelry Box

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