蒼天の星
四号と二号(音楽劇)の話。降下作戦前夜のつもり。
※女の子大好きな人が書いてるので、それを理解できる方向け
「四号は、不安じゃないの?」
気を張っていないと声も身体も震えてしまいそうだった。芯のない息まじりの声に、耳を塞ぎたくなった。
ヨルハ部隊に、弱音を吐くことは許されていない。
戦いたくないなんて、口が裂けても言えない。
私達は戦うために作られた存在なのだから、戦うことを否定するのは、生きる意味がないことを自分で証明することになってしまう。
それでも、不安はなくならなくて。
ミーティング後、四号が部屋にやってきた時は心底ほっとした。不思議と彼女にだけは胸の内を吐き出すことができた。
「二号は不安そうだね」
「だって、地球に降りるのは初めてだし」
「私もそうだよ?」
「四号は大丈夫。いつもちゃんと戦えてる。武器の扱いも上手だし。でも私は……」
徐々に小さくなっていく声がひどく情けなかった。
真珠湾降下作戦。
明日、私達ヨルハ部隊は初めて戦争に参加する。
訓練での私の成績は綺麗すぎるくらい平均的な数値だった。得意な分野がある訳でもない。四号のように気の利いた言葉をかけることもできない。可でも不可でもない普通のヨルハ機体。
窓から見える地球は美しい。人類のために、あの星を機械生命体から奪い返す。そのためのヨルハ部隊なのだから、私はアタッカーとして、最前線で武器を振るうしかないのだ。
「二号」
四号が私の手に手を重ねる。グローブ越しに彼女の体温が侵食してくる。無意識にきつく握りしめていた手から力が抜けていく。
四号のキラキラした目が私には眩しかった。
「地上に降りたら、何したい?」
「えっ?」
「私ね、空を見てみたいんだ! 地球の空って青いんだって」
私達が生活しているバンカーは宇宙空間に浮かぶ基地だ。ここから見える空は漆黒の宇宙か、スリープモードから目覚めた時に見える天井の白である。
そういえば、以前人類文化について学んだ時に、「青い空白い雲」という一文があった。昼の国から見る空は青くて、雲と呼ばれる水蒸気の塊が浮かんでいる。
地球の気象状況はここからも確認できることだけど、四号は地上から見る空に一際興味を抱いているようだった。彼女は私の手を握って、声のトーンを上げる。
「二号も一緒に空を見よう! もしかしたらバンカーが見えるかも」
「バンカーは見えないと思う。見えてもきっと砂粒くらいだよ」
「もう二号ってば真面目すぎ! 冗談なのに」
いつものように四号が笑うので、私もつられて笑った。訓練の合間の休憩時間の延長にいるような、和やかな時間だった。
「大丈夫だよ。私達ならうまくやれる。それに二号には私がいるでしょ?」
「うん。四号がいると安心できる」
私もそんな存在になりたい、なんて。とても言えなくて。でも、私を見つめる四号の表情は優しくて暖かくて、私の気持ちが少しでも伝わっていたらいいなと思う。
「よしよし。二号は笑ってる方が可愛いよ」
「か、からかわないで!」
「照れてる〜もうホント可愛い!」
ぎゅうぎゅうと抱き締めてくる彼女の向こうに、常闇に浮かぶ地球が見える。
機械生命体との戦いは日に日に激しくなっている。そんな状況で、ゆっくりと空を見上げる余裕があるのかわからない。
だけど私は、約束よりも、四号が私を励ましてくれることが何よりも嬉しかった。
(Twitterより。Twitterでは画像で投稿)
ちょっと直した。
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