めんどうな石
『たった40分で誰でも必ず小説が書ける 超ショートショート講座』を読んで書いたもの。
物書きの練習でたまに書いてます。せっかく書いたので、ここに上げておきます。その2。
「ねえ、ちょっと聞いてる?」
「聞いてるよーなに?」
「あのさあ、聞いてるなら相槌くらい打ってよ。君は人間なんだから。もっとこう、人間らしく反応してほしいんだ」
「石に言われたくないセリフナンバーワンだわ、それ」
コイツとは初夏にミネラルショーで出会った。年に一回開かれる石の即売会のようなものだ。
私が見つけたのは会場の端でひっそりと出店していた店のテーブル下に置かれた箱である。「どれでも1つ500円」とPOPが置かれ、売り物にはなりそうもないよう原石たちがごろごろしていた。不思議と気になって私は箱の中を漁った。こういうところにお宝は眠っているのだと石好きの先輩が言っていた。で、見つけたのがコイツ。
手のひらに収まるくらいの大きさの青い石。夜空をぎゅっと詰め込んだらきっとこんな感じだと思う。宝石質ではなく、ちょっときれいな石に近く、決して状態がいいものではなかった。
私は青い石が大好きだったので、迷わず買って家に帰った。丁寧に汚れを落とし、手始めに角を磨き始めた時――コイツは話し出したのである。
「私はねえ、あんたと違って暇じゃないの。仕事中は話しかけないでよ」
そう、私は仕事中なのだ。今はまだ珍しい在宅ワーカー。朝から晩まで家にこもってひたすらパソコンをカタカタさせている。
「話し相手がほしいって思ってたんじゃないの」
「今は間に合ってます」
「僕は話足りない。あ、こないだの話の続きだけど、」
言い忘れていたけれど、コイツは本当にうるさい。一度話し出したら止まらない。
「実はね、僕は石油王なんだよ」と言ってきたときは、流石にショーケースに閉じ込めようかと思ったほどだ。
でも、良い点もある。孤独感が紛れる(仕事も邪魔されるが)それに今では私の生活管理もしてくれている。コイツのおかげで私は割と規則正しい生活を送れている。
最近仕事の依頼も増えてそういった意味では、いい買い物をしたのかもしれない。
「手が止まってますけど」
「はいはい。働きますよー」
「じゃんじゃん稼いで新しい石を買ってよ。ほしい石があるんだ」
「却下。うるさいのはあんたひとりで十分!」
そんなことを話しながら、私は今日も生きている。
気になって図鑑でコイツの正体を調べたが、その結果は言わないことにしている。
これ以上うるさくなったら困るもの。
題材:めんどうな石
★それはどんなモノですか?説明してください
ミネラルショーで買った青い石。どれでも1つ500円といういわゆるワゴンセールで見つけた
夜を閉じ込めたような石。宝石質ではないので値段相応といった感じ
実はしゃべる
しかもうるさい
話し相手として買ったんでしょとか言ってくる
「実はね、僕は石油王なんだよ」といってきたときは、流石にショーケースに閉じ込めようかと思った
★それはどこでどんなときにどんな良いことがありますか?
在宅ワーカーの私にとっては相棒のようになっていた
孤独感が紛れる
生活を管理してくれる
何よりきれいなので癒やされる
★それはどこでどんなときにどんな悪いこと、または上に書いたこと以外でどんなことがありますか?
お喋りが大好きで一度話し出すと止まらない
磨けと言ってくる
次はこの石を買えと言ってくる(値段も気にせずに…)
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