Benedizione
ミリーナ(ゲフィオン)とカーリャ(ネヴァン)の過去捏造です。捏造大丈夫な方向け。
暗いです。ぱっと書いてしまったので、切り離される話は改めて熟考したい……今後の展開でネヴァンに対する見方変わるかも知れない……
本編で判明している事柄はそのまま採用していますが、それ以外は捏造だと思って下さい。
「なぜですか!」
感情のまま吐き出した声は聖堂を反響した。祈りの場には大凡そぐわない声量だった。
ミリーナ様は冷静そのもので、先程からずっと目を逸らしている。感情も気持ちの揺らぎも読み取ることができなかった。意図して心に結界を張っているのかと思うほど、何も。
「教えて下さい! 私にはその権利があるはずです!」
「もう決まったことなの」
反対しても、理由を求めても、決定事項だから変わらない。私にはそう聞こえたし、ミリーナ様もそういうつもりで言ったのだと思う。
話があると呼ばれて、やっと二人きりで話せると思ったのに、ミリーナ様はすでに決断していて。緊張と不安が入り混じった感情はすっかりなくなっていた。
これは私への報告にすぎないのだ。
「どうして、全てお一人で背負おうとするのです! せめて私も、」
「これは私の責任なの。カーリャのじゃない」
――明確な拒絶。
「……私は、ミリーナ様の鏡精です」
なぜ、こんなにも声が震えるのだろう。事実を口にしただけなのに。
私にとってミリーナ様は唯一無二の存在なのに、ミリーナ様の一番は未来永劫イクス様で、私は永遠の二番。
それが嫌だとか不満だという意味じゃなくて。
どんなに思っても、言葉を尽くしても、私の気持ちはミリーナ様に届かないのだとわかってしまった。
――嘘。
大切にされている自覚はある。
でも、知っている、わかっているでは足りなくて、私は言葉という証明が欲しかった。
「ずっと一緒だって、言ってくれましたよね。お願いです。私が必要だと言ってください」
それは私の存在意義。
一緒に、というならば、私はどこにだって行ける。たどり着く先が無限の虚無であったとしても。
「ごめんね」
細い両腕が私を引き寄せる。
何に対する謝罪なのか問いただすこともできず、私はミリーナ様の腕の中で立ち尽くしていた。
触れたところから体温が伝わってきて、懐かしい感覚が余計に胸を苦しくさせる。
これは誰の痛みなのか。何を訴えているのか。
聞いたところで私も、きっとミリーナ様も答えを持っていない。
「カーリャ」
名前に全ての感情をのせるなんてずるい。
言葉にしてくれないと、ミリーナ様のことなんて何ひとつわからないのに。
「いやです」
「カーリャ聞いて」
耳元で諭される。
お願い、と泣きそうな声が肌を擽る。
私の願いは聞いてくれないのに。
「たとえどんな結果になろうとも、あなたは私の大切な親友よ」
記憶の中で、泣きそうな顔のミリーナ様が同じことを言っていた。私がまだ幼体で、鏡士が過去に行っていたキラル分子精製法について習った時に――
光の粒子が漂っている。足元には、あの時書物で見た繊細な紋が浮かび上がっているのだろう。
「……ミリーナ様はきっと忘れてしまうのでしょうね」
「じゃあ、あなたが覚えていて」
忘れないで、と言わないところがミリーナ様らしいと思った。
「私ね、カーリャのこと、――――」
ぷつん、と。
何かが途切れる音がして、世界が暗転した。
切り離すってどういうことなんだろうと、悶々とした気持ちを昇華したくて書いた気がします。マスターは記憶と一緒に鏡精を切り離すってしんどすぎるし、そこまでしてミリーナには守りたいもの、成し遂げるべきことがあったんだろうなとは思いますが…厳しすぎません?世界が。
ぱっと思いついて書いたけど、二人にとって重要なことだと思うので、じっくり書きたいなとは思いつつ、これはこれで。
失った記憶はもう戻らないのかな…ああ…つらい。
Benedizione:祝福(イタリア語)
(プライベッター転載、あとがきはここのみ)
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