彼女とあたしと、彼の話
ロゼアリです。アフターエピ後。ゲーム設定。ED後捏造。
あのね、それでね、と息継ぐ間もなく話す彼女に、あたしは口を挟むのを諦めた。
きっと彼女は、話すのをやめた時点で、あたしが何を言い出すのか分かっているのだろう。なんとも可愛らしい行動なのだけれど、ちょっぴり痛い。
彼女が恐れているのは、別れのことばだ。
「そろそろ帰るね」
「続きはまた今度」
「明日も公務でしょ?」
そう言って何回泣かせたかわからない。
最近は流石に泣かなくなったけど、あたしだって、毎回別れ際に沈み込む顔を見るのはしんどい。
テーブルに肘をついて、うんうんと相槌を打つ。彼女が用意してくれた焼き菓子をたまに口に運ぶ。
彼女の話は終わりそうにない。それもそうだ。こうして会うのは三ヶ月ぶり。
今夜は彼女の気が済むまで、付き合うつもりできた。明日は一日、彼女の休みに合わせてフリーにしてある。
彼女はそれを知らないけれど。
「ねえ、ロゼ。聞いてる?」
「聞いてるよ、お姫さま」
「もう! ちゃんと名前で呼んでよ」
「わかったわかった。だから怒らない。アリーシャ、話の続き。聞かせて」
「そんなこと言って、帰れなくなるよ?」
「いーよ」
「えっ?」
「だから、いいって言ってるの。気が済むまで話聞いてあげる。明日はあたしも休みだから」
ぱあっと笑顔を浮かべた彼女は、スレイが付けた真名そのものだった。
これでいい。
彼女の泣き顔は、あたしだけが知っていればいい。
「嬉しい! あ、紅茶冷めちゃったよね。淹れ直してくる!」
ティーポットを手に、慌ただしく部屋から出ていく彼女を見送って、あたしは冷たくなった紅茶を啜った。
彼女は紅茶を淹れることができたっけ。
側仕えたちだって、もう寝ている時間だ。なんだか心配になってきて、あたしは立ち上がる。
「……あたしも随分あまくなったなあ」
あんたのせいだよ、スレイ。
遠い地で眠る彼へ、文句を飛ばす。
いつも返事がくることはないのに、タイミングよく、ふわり、と一筋の風がカーテンを揺らした。
突発的に書いたのでとても短いです。けど、これくらいが1番上手くまとまる?気がします。いつも余計に書きすぎてるかも…
ロゼアリだけど、2人がたまにスレイの話をして彼のことを思い出してくれたらいいなと思って、ちょっとスレイ出しました。人間組の話も楽しそう。それならアニメ設定の方がいいかな。
旅が終わっても、たまに会って、お話しして、たくさん笑って喧嘩してほしいのです。
(ぷらいべったーに投稿したものを加筆修正しました)
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