Nostalgia

ミリーナ(ゲフィオン)とカーリャ(ネヴァン)の過去捏造です。捏造大丈夫な方向け。女の子大好きな人が書いているのを理解できる方向け。

※4部1章5話のネタバレがあります


「カーリャお願い! あと一回だけでいいの」

 「ミリーナ様の『あと一回』は、これで三度目です」 

「だって、だってね。カーリャが可愛すぎるんだもの」

  これは大問題よ、とミリーナは続ける。そんな彼女にため息を吐いて、カーリャは小一時間ほど前のことを思い出していた。 


 ************* 


 「明日から休暇でしょう? 本当は、研究資料を完成させたかったんだけど」

  上着を脱ぎながら、ミリーナは不満げにこぼした。明日から休みだからこそ、早く帰れと同僚に言われたらしい。カーリャも同じ意見だった。

  彼女の傍に置かれた鞄は、鞄本来の厚さを保っている。書類仕事を持ち帰っていないことにこっそり安堵した。カーリャはミリーナに労いの言葉をかけて、やんわりとバスルームへ向かうよう誘導した。シャワーを浴びれば、気持ちも切り替わると踏んだ。案の定、ミリーナは石鹸のいい香りをまとって、上機嫌で戻ってきた。

 それから入れ替わりでカーリャもシャワーを浴びた。 明日からの予定はまだ聞いていない。カーリャもまたミリーナに合わせて休暇を取っていた。部屋でのんびりするのもいいし、彼女が出かけるなら、もちろんついていくつもりだった。

  ミリーナはまだ起きているだろうか。このところ残業続きだったので、先に眠ってくれていた方が安心だ。濡れた髪を拭きながらそんなことを考えて、バスルームの扉を開ける。

  彼女はしっかり起きていた。

 「……明日着る服を選んでいたんですか?」

  何ともわざとらしい発言だと自分でも思った。

  ミリーナがクローゼットから引っ張り出してきた服と、新たに具現化したと思われる服がベッドの上に並べられている。オレンジ色の明かりの中、様変わりした部屋の様子と、彼女から向けられるキラキラした目から、先手を打たれたことを理解した。

  どう見てもミリーナが着るような服ではないとわかってはいる。彼女は可愛いより大人っぽい服を好んでいる(もちろんカーリャだってそうだ)だとすれば、この服は誰が着るのか。

 (やられましたね……) 

 どう言えばこのハイテンションなマスターを落ち着かせることができるのか、すぐに分かれば苦労していない。カーリャ、とミリーナが呼ぶので、頭の中で抗議文を作成しつつ、彼女の傍まで足を運んだ。

 「私ね、カーリャが『たまには休んでほしい』って言うから、有給を取ったのよ。三日もね。フィルも『息抜きも大事だよ』って言うから、素敵なカフェも見つけたわ」

  ああ、これは有無を言わせない口調だと思った。彼女の中ではすでに結論が出ていて、それを報告している状況、と言えばわかりやすいだろうか。まるで先生が生徒に物事を言い聞かせているような感覚。

 「それは良いことです。明日の天気予報は晴れでしたので、良い一日になりそうですね」

 「カーリャも一緒にきてくれる?」 

「もちろんです。お付き合いしますよ」

 「よかった! そう言ってくれると思ったから、あなたに似合いそうな服をね、たくさん準備したのよ」

 「あの……それとこれとは、どう関係があるんですか」 

「カーリャのお願いをたくさん聞いたのだから、私があなたの服を選んだって罰は当たらないわよね?」 

 そうきたか。休みをどう過ごそうが本人の自由だ。カーリャだって口を挟むつもりはない。けれど、まさか一緒に外出する予定を立てられるとは思ってもいなくて。

  いや、外出に付き合うこと自体は問題ないのだ。その条件が問題なだけで。あとカーリャの話はまだ終わっていない。

 「ミリーナ様。就業規則は守らないとだめです。規定通りに休んでもらわないと困ると、泣きつかれた私の身にもなってください」

  努めて冷静な声で諭す。これは事実なので仕方がない。彼女の勤勉ぶりは、まさにワーカーホリック並だった。年々ひどくなるので誰かがブレーキをかける必要がある。カーリャはその数少ない『誰か』だった。

 「それは、悪かったと思っているのよ。まさかカーリャを使うなんて思ってなくて。気を悪くしたのならごめんね」

 「私は、もう慣れていますから。わかっていただけたなら、いいんです。それで、その服は……私が着るんですか?」 

 申し訳なさそうにしていたミリーナの顔が、ぱっと明るくなる。彼女が持っているものは、ピンク色の手触りの良さそうな布地にレースをあしらった服のように見える。幼い子どもが着ていたら、人形のように可愛らしいだろう。

  しかし、カーリャはミリーナの隣にいても何の違和感もないほど、人間の大人と同じ姿をしているのだ。あれに袖を通すのだけは絶対に避けたい。

  ミリーナはカーリャの本心をわかっているのかいないのか、楽しそうに笑って持っていた服を広げて見せた。

 「これは候補の一つよ。実際に着てみた方がいいと思うの。あとは眠るだけだし、これから試着してみない?」 

 カーリャはちらりと時計に目をやると、時刻はすでに日付は変わっていた。彼女が何時に起きるつもりなのかは不明だが、この様子からするとゆっくり寝ているつもりはなさそうだ。常日頃の寝不足を解消してもらいたい気持ちと、ミリーナの楽しみに付き合ってあげたいという気持ちから、カーリャは口を開けずにいた。

  成体になってから、ミリーナはカーリャを着飾ることに楽しみを見出したようだ。始めはお洒落とは無縁のカーリャのためにやっているのかと思えたが、どうやら違うらしい。

  もしかしたら、人形遊びの感覚に近いのかもしれない。カーリャ自身は人形遊びがどういうものなのかよくわからないが、マークが教えてくれた。自分の分身として、人形を可愛がる行為をそう言うのだと。どこから知識を仕入れてくるのか気になるところだが、あながち間違いとは思えなかった。  ミリーナにはカーリャが相当困っているように見えたらしい。持っていた服を置いて、カーリャの顔を覗き込んだ。

 「どうしても嫌?」

  彼女のずるいところは、決して強制しないところだ。特に私情においてはこうして許可を求めてくる。断りきれないカーリャの答えは大抵イエスになってしまうのだが。

 エメラルドが揺れている。綺麗な深緑に染まる瞳に弱いとわかっているのに、目をそらすことができない。幼体の頃はルビーだった瞳が、彼女と同じ色になったことが嬉しくてたまらなかったことをいまだに覚えている。

 「嫌だなんてそんな。うまく、言えません。でも……そうですね。街で見かけたドール服を再現するのはやめてください」

 「わかったわ。少し残念だけど。じゃあ、この前の服をベースにするのはどうかしら。カーリャ、気に入っていたわよね? 私もあの服、好きよ」 

 やはり、カーリャにはミリーナの気持ちがあまり理解できなかった。理解できなくても、彼女がそう望むのなら断る理由はない。

 「そこまで仰るのなら、私も譲歩します。でも、これで最後です。約束してください」

  いいですね、と念押しする前に、ミリーナはカーリャをぎゅっと抱きしめた。危うく転倒しかけた。もちろん、彼女の返事はイエスだった。

  早速服を手渡され、着替えるよう促されて何とも言えない心境になる。でも結局、彼女の笑顔に全てを許してしまうのだ。彼女が望むなら、何だって叶えてあげたい。そう思わずにはいられなかった。


  ――そして冒頭に戻る。

 「可愛い以外に感想はないんですか?」

  曲がったリボンを直しつつ、反抗の意を込めてそう言った。ミリーナは少し驚いて、でもすぐに満面の笑みで、

 「大好きよ」 

 だなんて言うものだから、しばらく満足に口が利けなかった。   


リヒターとアステルのやり取りを見ているネヴァンちゃんに思うところがありまして。

その後のクラースとの会話から、もしかして彼女たちもこんなやり取りしてた時期があったのかなあと妄想を膨らませた次第です。


『羨ましい……いや、懐かしいといった顔かな』


え、何?もっかい言って??

羨ましい、じゃなくて懐かしい。

懐かしい、なら、覚えがあるってことだよね?


リヒターはアステルと一緒にいると雰囲気がだいぶ違う。

これはきっとネヴァンちゃんもそうなんでしょう(これは私の深読み)

ここまでの会話から、リヒター側の立ち位置に、ネヴァンちゃんがいるんだろうなと思いました。

(もしかしたらネヴァンちゃんは、リヒターとアステルにイクスとミリーナの姿を重ねていたのかもしれませんが、だったら『羨ましい』という表現は出てこないかなあ。ここは解釈によりますね)


リヒターも言ってましたが、ネヴァンちゃんは本当に顔に出やすいタイプみたいですね(可愛い)

感情を隠すのが下手(可愛い)

でも、話を逸らすのは上手、というか成功してる(可愛い)

なんて愛らしい子なんでしょう…にこにこしちゃう。


4部はこれからがとても楽しみです!!

と、だいぶ話が脱線しました。


最初はもっと「リヒターとアステルの関係性」に寄せてたんですが、書いてるうちに変わってしまうのはいつものことで…書き始めた頃はネヴァンちゃんがもっとミリーナに対して怒ってました。それはまた別の話でやろうと思います。

着せ替えネタ(?)を実は結構書いてたりして、まだ書きかけにもあったりします。似たような話ばかりだ〜〜好きなんでしょうね、多分。笑 可愛い子って自分好みに着飾りたくなるじゃないですか。子どもに可愛い服着せたいみたいな?そんな感じに近いのかと。


私たちがよく知っているミリーナ(二人目)は可愛いもの好きですが、一人目のミリーナがそうとは限らないのが難しいところです。公式から名言されるまでは妄想でいきます。

それと、毎回マークを都合よく使ってごめん…悪気は全くないんだ。ちょうどいい位置にいるのでつい。マークはネヴァンちゃんの良き理解者であってほしいと思います。


捏造がひどいので書くのどうしようかなあと思うときも多々あるのですが、あまり思いつめずに書きたいときに書きたいものを書くスタイルを続けたいです…!

そのうちここだけに掲載が増えそう…


(プライベッター掲載。少し修正)


Jewelry Box

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