Rrevolving lantern
本編前の9Sと2Bの話。
「君は死にたくないよね?」
「2Bのためなら死んでもいいですよ」
◆❖◇◇❖◆
そうやって君はまた私を困らせる。
死にたくないと言ってくれたら、私は喜んで今まで君を殺してきた罰を受けるのに。
私のことを真っ直ぐに透き通ったアリスブルーが見つめている。
見覚えのある目だった。
ああ、『この』9Sにも気づかれてしまった。
私はどうしようもないくらいに隠し事が下手なのだと、教えてくれたのはいつかの君。
「でも、そこが可愛いんですけどね」
E型としては欠陥品の私を彼は笑って肯定してくれた。ひどく感情が乱れた。
この感情の名前を私はまだ見つけられないでいる。見つけたくないと思っている。だって私は強くないから。
軍刀が小さく金属音を立てた。
これは終わりを告げる音。
でも、もう何も感じなかった。9Sとの再会は常に約束されている。
その対価として、私は彼を殺さなくてはならないのだ。
◆❖◇◇❖◆
2Bが僕を困らせる。
死にたくないと言ったところで、司令官からの命令は覆らない。僕の胸に渦巻いているこの感情が昇華される代わりに、彼女が苦しむだけ。
死にたくない、殺さないで。もっと2Bと一緒にいたい。
もし仮に僕がそう言ったら、2Bは手に持った軍刀を自分自身へ向けるだろう。躊躇いなく、滑らかな動きで。そんなこと、僕は望んでいない。
どんなに演算しても結果は同じだった。悔しいけれど、優秀なスキャナーの僕でもたどり着けない答えがある。
さいごに、2Bの姿をメモリーに記憶する。すぐに消されてしまう記憶でも、今だけは僕の宝物にすることを許して欲しいと思いながら、目を閉じた。
軍刀を握り直す音がする。
これは終わりの音。
でも、絶望はなかった。2Bとの再会は常に約束されている。
その代償に『今』の僕は死ななくてはならないのだ。
(Twitterでは画像で投稿。少し修正)
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